【サガ20周年記念】時田貴司氏インタビュー その1 #saga

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9人&半年で作った『サガ1』は時田氏のゲーム作りの原点に

──『サガ1』にかかわることになったきっかけは?

時田貴司氏(以下、時田。敬称略) 河津さん(※1)と初めて一緒に仕事をしたのは、『FF?』のときでした。そのあと僕は『半熟英雄(ヒーロー)』、河津さんは『FF?』の開発に入ったんですが、その頃からなんとなく一緒に飲みにいくことが増えていって、だんだん意気投合していったんです。そんな流れもあってでしょうね。河津さんが『サガ1』を立ち上げる際に誘われたというわけです。

──河津さんと初めて会ったときの印象はどうでしたか?

時田 本当の意味で最初に見たときの印象は、なんか背広を着た保険の外交員みたいな人がいるなあ。それが入社面接に来た河津さんだと知ったのは、そのあとでした(笑)。

──『サガ1』を開発していた当時の雰囲気は?

時田 何しろみんな若くて、アルバイトが多かったですね。僕も演劇をやりながらアルバイトとして参加してました。「なんだか楽しそうだから」と集まってきた人達が、ワイワイと合宿してるような感じで作ってましたね。

──時田さんが担当されたパートはどこですか?

時田 当時は役割分担が明確に決まってなくて、グラフィックデザインやモンスターデザインを中心に、シナリオのアイデアを出したり、効果音を作ったりしてました。「やれるヤツがなんでもやったらいいじゃん」みたいな感じでしたね。シナリオに関しては、河津さん、石井さん(※2)、伊藤さん(※3)、僕の4人でアイデアを出し合って、それを河津さんがまとめるという形でした。『サガ1』は塔の階層ごとに世界観が違うから、どんな話でも入れ込むことができたので、みんな楽しみながら作ってましたね。「ゲームって、なんでもアリがいいよね」という当時の雰囲気は、そのあとの『ライブ・ア・ライブ』や『クロノ・トリガー』を作るときにも生かされたと思います。

──モノクロのGBは、グラフィックが大変だったのでは?

時田 むしろ逆で、色で悩まずに割り切ることができたので、やりやすい部分も大きかったかな。GBはファミコンと比べると容量などの問題は大変でしたけど、ファミコンにはないステレオ音源が使えるとか、ユニークな部分も多かったです。塔をのぼるときの音楽は特にステレオでぐるぐる回る感じで、テストプレイで少し酔いました(笑)。

── 時田さんがデザインした「立つスライム(※4)」はとてもインパクトがありました。なぜ立つ形に?

時田 『FF』の天野喜孝さんのモンスターデザインがリアルな路線だったので、うちの会社でも『ドラクエ』のようにポップな路線があってもいいのでは、と意識してデザインした流れですね。ヒントにしたのは「怪獣王ターガン」というアメリカのアニメに出てくる、ヒューヒューとポーポーというアメーバ親子のようなキャラ。伸び縮みしたり、変形して戦車やバリアになったりするんです。彼らがすごく好きで、スライムだけど擬人化されているというキャラを作りたいなと思って、立つ形にしたんです。

──『サガ1』の開発期間や人数はどのくらいでしたか?

時田 構想や企画がまとまったあと、開発にとりかかって完成するまで半年くらいだったかな。開発スタッフは、音楽も含めて9人くらい。グラフィックは僕ともう1人女の子がいて2人で、プログラマーも3人とか。これでミリオンヒット(※5)になったんだから、そりゃ儲かるわ(笑)。真偽はたしかめてませんけど、河津さんのボーナス袋が(厚みで)立ったという伝説のウワサがあります(笑)。

──発売後の印象深いエピソードはありますか?

時田 ソフト発売日に、みんなで会社付近(当時は御徒町)のディスカウントショップへ行ったんですが、目の前で買ってくれる人が何人もいて、嬉しさが込み上げましたね。

(その2に続く)

※1:河津秋敏 『サガ』シリーズの生みの親で、シリーズ全体を監修するプロデューサー。時田氏とはほぼ同期。
※2:石井浩一 『聖剣伝説』シリーズやチョコボの生みの親。2007年に退社。
※3:伊藤裕之 『FF』シリーズなどを手がけるディレクター。『FF?』のアクティブタイムバトルの発案者。
※4:立つスライム 『サガ1』のスライムは、二足歩行をする形でデザインされている。これは続編の『サガ2』にも受け継がれた。
※5:ミリオンヒット『サガ1』は、当時のスクウェアのタイトルで初めて100万本セールスを突破した記念すべき作品。

時田貴司氏プロフィール】
 スクウェア・エニックスのプロデューサー。グラフィッカーを経て、『FF?』でゲームデザインを担当して以降、多くの名作をプロデュースしてきた。近年はプロデューサーとディレクターのどちらでもあるという意味で、「プロレクター」と名乗ることもある。代表作は『半熟英雄(ヒーロー)』シリーズ、『ライブ・ア・アライブ』、『光の4戦士』など多数。

※インタビュー全文は電撃ゲームス 6月18日発売号に掲載されています。

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