【Game Nights at the Apple Store バンダイナムコゲームス】 定番×定番 30周年を迎えたパックマンの可能性
10月11日日曜、アップルストア銀座で、「Game Nights at the Apple Store」と題するイベントが開催されました。すでにさんざんTwitterでつぶやかせていただきましたし、Togetterでのまとめも公開していますが、記事にもさせていただきます。まとめてお読みいただくなら記事がいいと思います。御自分のつぶやきに引用される場合は、Togetterからどうぞ。
あと、最初にお断りしておきますが、写真、ひどいです。特に山田さんのお顔がさっぱりまともに写っていません。あらかじめお断りするとともに、お詫びいたします。
さて、Game Nights at the Apple Store。実はこのイベント、11日から17日まで続くシリーズになっていまして、その第1回がバンダイナムコゲームスだったわけです。しかも、この日のイベントにはAppBankの編集長/宮下泰明君も登壇し、バンダイナムコゲームスでiPhoneアプリ全般のマーケティングを担当する山田大輔さんと対談を行うというプログラムになっていました。これは興味深い。日本で最もiPhoneゲームを見続けているサイトの編集長と、日本で最もストレートに、直球勝負でiPhoneアプリをリリースしている大手ゲームデベロッパーの二人です。実際、メモをまとめ直してみると、なかなか鋭い発言がいくつもあったんですね。会場では、けっこう笑ってばかりだったので、気がつかなかったりしましたがw
というわけで! そのレポートをお送りいたします。iPhoneゲームに少しでも興味のある方はぜひ、御一読ください。
●Game Nights at the Apple Store:バンダイナムコゲームス
【第1回は、バンダイナムコゲームス。今年発売30周年を迎えるパックマンを中心にご紹介します。また、スペシャルゲストとしてAppBankの宮下泰明氏が登場し、バンダイナムコゲームスの山田大輔氏と対談。AppStoreでのゲームアプリのこれからや、バンダイナムコゲームスのコンテンツについて熱く語り合います。】
山田 いきなりマイクの高さがあってないですね。びっくりしました。こんばんは、バンダイナムコゲームスの山田です。この場所(アップルストア銀座のイベントスペースはいいですね。ここでお話させていただくのは3回目なのですが、ここから、みなさんの様子がよく見えるんです。三連休の真ん中の日曜で、疲れてらっしゃると思います。どうぞ、ゆっくり寝ててください。すごいムービーとか大きな音を出すような演出はありませんからw
また、今日からこの場所ではじまるGame Nights at the Apple Storeの記念すべき第1回で光栄です。このあと、平日の回もあるんですよね? ぜひ、他の回にも足をお運びください。つぶやかれる方は、ハッシュタグ #gnights でお願いします。
それでは本題に入る前に、自己紹介させてください。バンダイナムコゲームス(マーケティング企画部)の山田大輔と申します。Twitterのアカウントは @yamada_daisuke です。ぜひ、フォローしてください。アプリのことじゃなくて、競馬の話とか飲みにいった話ばかりかもしれませんが。
山田 今日は、これまで2年間、AppStoreでバンダイナムコゲームスがやってきたことと、弊社のキラーコンテンツであるパックマンのお話をさせていただこうと思っています。まず、こちらをごらんください。
山田 かなり見たことのあるアイコンがあるんじゃないかと思います。『のびのびBOY』は、僕がプロデュースさせていただいたタイトルです。こう見ていただいても、今日のテーマでもある「黄色いあんちくしょう」が多いということがおわかりいただけると思います。数えてみたのですが、すでに70本以上のアプリをリリースしていまして、社内資料で見ると、年内に100タイトルに到達するんじゃないかというリリース計画があります。それくらいのアプリを作っているんですね。AppStoreのオープンから2年と三か月ですから、毎月……ちょっと計算できませんが、すごい数を出しています(註:都合70本だとして、月に2.6本平均)。日本の会社では、これだけリリースしている会社はそうないんじゃないかと思います。まぁ、おもしろおかしくやらせていただいています。
山田 最近リリースされたアプリでは『スタードライバー』というアニメのアプリがあります。無料です。iPad版もあります。こちら、毎週日曜の夕方5時から……今ですね。今、まさにやってますアニメの……なんちゅうタイミングやw という感じですが、このアプリを見ていただければ第1話、第2話の様子はかなりわかると思います。ぜひ、このアプリをチェックしていただいて、来週から、アニメも御覧ください。バンダイナムコゲームスは、多くのアニメ、コンテンツの製作委員会に入ったりしています。その点で、こういうアプリが出せるのも、弊社の特徴ではないかと考えています。
●GameCenter対応からソーシャルゲームへ
山田 最近、iOSにGameCenterという機能が追加されたり、iPhoneは、かなりゲームに力が入っていると思います。GameCenterもその1つですが、ソーシャルということに注力されているように見えます。
ソーシャルソーシャルと、みなさん、そおおっしゃる。
これ、流行らないかと思っているのですが……。現在は『パックマン』と『ミズ・パックマン』が対応していますが、弊社でも、iPhone、iPod touchは、ソーシャルゲームとも親和性が高いのではないかと考えていますので、今後はGameCenter対応タイトルを増やしていく予定です。具体的には『塊魂』が近日対応予定で、他にも数本、対応を考えています。
山田 パックマンについてですが、現在までに8本の『パックマン』アプリをリリースしています。2年で8本ということは、これは計算できますが、ほぼ3か月に1本というペースで、ということは、誰かが常に『パックマン』アプリを作っているということになります。
※ここで『パックマン』30周年を振り返るムービーが上映された。80年代の全米での熱狂ぶりには改めて驚かされる。世界で最も成功したビデオゲームとしてギネスに登録されているだけでなく、全米ではアニメも放映され、450種類以上の関連グッズが販売されていた。しかも、そのアニメの最高視聴率は50%を超え、「80年代のミッキーマウス」と称されるほどだった。
山田 最近ではGoogleのロゴがプレイできるパックマンになったことが、御記憶に新しいかと思います。この時は、僕も関わっていたのですが、さすがGoogleさん、機密保持がすごかったですね。
このように、パックマンは水道管の兄弟と並ぶほどのバリューを持っていまして、海外でもいけるキャラクターとして弊社としては押しています。実際、すでに体験版も含めて1500万以上の『パックマン』アプリがダウンロードされています。正確な数字はわかりませんが、これはおそらくiOSデバイスの3台か4台には1本、『パックマン』が入っているということになるのではないかと思います。すごくないですか?。
そして、今年、30周年を迎えたパックマンは、ますます進化していきます。その方向性は、パックマンを壊したい! ということです。
※新作『PAC-MAN REBORN』のムービー公開
山田 オレンジ色だったり、赤く塗られていたり、頭になにかつけていたり、あの、おでん乗っけているヤツもいますね、あれは……ですね。このように、自由にパックマンを育てる、パックマンが進化していく育成型のパックマンを作っています。もちろんソーシャル要素ももり込んでいます。ユーザー同士のパックマンが出会って、配合して……出会い系みたいな感じですね。『PAC-MAN REBORN』は11月終わり、もしくは12月あたまのリリースを予定しています。
※『PAC-MAN REBORN』の概要は、以下のスライドの通り。
●ケータイかiPhoneか、そういう段階に入っている
※ここでAppBank編集長/宮下泰明君登場
宮下 こんにちは、AppBankの宮下です。昨日は名古屋でイベントをやっていまして、今日、そのまま来ました。
最初に少し、AppBankの話をさせてください。AppBankは、ちょうど2年前からはじまった、iPhoneアプリとiPadアプリをおすすめするサイトです。iPhoneアプリは5000くらい、iPadアプリは1000くらい、すでに記事を書いています。AppStoreには、毎日300〜400くらいのアプリがリリースされるのですが、すべて見て、選んで、書いています。また、最近は毎週イベントをやっていまして、昨日が名古屋、来週が仙台です。次は……。
山田 香川じゃないですか?
宮下 よく御存知ですね、はい。僕らAppBankは、とにかくアプリの中身がわかる記事ということを第一に考えています。どこを楽しむべきか、自分たちがどのように楽しんでいるか、それだけをお伝えしています。
山田 僕たちももちろん(アプリを)紹介してくださいと、普段、お願いすることはあるのですが、載らなければ、そういうことだと思っています。電話がかかってきますから、「山田さん、あのアプリ、ここをこうした方が全然いいです!」って。はい、そんなわけで、僕が日本で、いや、世界で一番だと思っているiPhoneアプリ情報サイト、AppBankの宮下さんと、世界で何十番目かにアプリを出しているバンダイナムコゲームスでお送りします。
まず最初にお聞きしたいのですが、この2年、AppBankさんで記事を書かれてきて、iPhoneって、変わってきましたか?
宮下 確実に変わっています。最初は、iPhoneはガジェット好き、デジタルグッズ好き、そしてApple好きだけのものでした。いわゆるオタク層です。今ではもっと普通のものになりました。たとえば、去年は電車に乗っていても車両に2台くらいの感覚だったのですが、それが最近は5台くらいに増えています。もうケータイかiPhoneかというレベルになっていると感じています。
山田 持っている人の層が変わって、その量、数も増えてきましたね。2年前は、社内で「iPhoneをやりたい」って言っても、「なにそれ? 流行るの?」というような反応でしたが、最近は「山田さん、僕、iPhoneやりたいんですけど」って開発スタッフが言ってきますもん、モテようと思って。
宮下 モテると思って?
山田 そうです。3Gのころは、まだここまで大きく流行ってはいなかったですよね。なので、そんな話はなかったのですが、今は家庭用ゲーム機のチームからも、フューチャーフォンのチームからも話がきます。さらに、女性のスタッフからも同じことを言われるようになりましたね。最初は、いわゆるギーグ、オタク向けだったのに、女性からも企画が上がってくるようになったんです。
宮下 なるほど。アプリの話ですが、アメリカでは売れるアプリの傾向が似ているのですが、日本は違いますね。革新的だとか、そういうことが評価されるのではなく、軽いとか、ちょっとあか抜けているとか、そういうことが評価されているような気がします。最近、大手の、ゲームメーカーさんではなくてTOYOTAとか、そういうところがきてますよね。そうやって(プロモーションにiPhoneアプリが使われるようになって)、ちょっとおもしろい感じのアプリが出てくるようになりました。
山田 とにかく最近は一般メディアでのウケ方が違いますね。
宮下 今は、たとえばネットでフラッシュコンテンツを作るよりも、iPhoneアプリを作った方が絶対に(プロモーションとして)効果的だと思います。
山田 プロモーション的なアプリの使い方は、この半年でずいぶん増えてますね。個人的には、そういうゲームゲームしていないものも、僕は好きです。もっと自由に、アプリにゲームを絡ませるくらいでいいんじゃないかと思うんですよ。
●『太鼓の達人』海外展開ブレインストーミング?
宮下 ゲームの話をしましょうか。
山田 そうですね。ゲームも、ちょっと変わってきてるんですね、視点を、すごく変えなければならなくなりました。たとえば弊社だったら『エースコンバットを家庭用と同じクオリティで出します』というと、それで喜んでいただける方は、今は限られているんじゃないかと思ってるんです。よく言うのですが、PSPやDSは、ゲームをプレイすることが目的で買われるものですが、iPhoneは違います。電話としてだったり、音楽を聴くものだったりする、つまりゲームを目的としない人たちが多いわけですから、当然、好まれるものも違います。
宮下 iPhoneのゲームということで考えると、コンテンツをいかに割り切るかということが重要ですね。プレイ感はどうだろう? ということも大事で、(移植タイトルでも)iPhoneのためにできているかどうかが問題になると思います。
山田 (一度のプレイ時間は)もって5分って言いますもんね。
宮下 その最たるものが『Coin Doozer』です。アーケードによくあるヤツですが、ただコインをどんどん入れて、どんどん景品を落としていく。ただそれだけで、すごくウケています。また、『i刺身』というアプリは、刺し盛りのパックにたんぽぽを乗せていくだけなんです。それだけです。プレイしているというよりも、ただ時間が経っていくだけのゲームなのですが、どうじゃなきゃわからない、そんな程度じゃないとプレイできないというユーザーも多いんです。
山田 東京ゲームショウでは僕もびっくりしたのですが、ハドソンさん、ちくわを投げるだけのゲーム(『僕とちくわと鉄アレイ』)を出展されてるんですよ。東京ゲームショウですよ。すごいなぁと思って。
宮下 東京ゲームショウですからね、変わったなぁ。
山田 僕ら、ちくわを投げるゲームのとなりで『太鼓の達人』を出展してたんです。
宮下 はい、『太鼓の達人』は、iPhoneのためにあるようなゲームですよね。海外での展開はないんですか? 僕の大好きなLadyGagaパックとか出してくださいよ。
山田 LadyGaga? 海外では彼女の事務所に直接話しにいかなければ行けないんですけど、そこにたどり着くまでが大変でしょうね、いくつもエージェントがあって……でも、iTunesのPingでも一番、人を集めてますよね。
宮下 海外でもドン! とカッ! でやればいいんですよ。AppBankでも『太鼓の達人』のプレイ動画を公開したら、「海外でも出せ」って、向こうの読者が怒ったりするんですよ。
山田 LadyGagaパックはあるなぁ……。実は以前、『ドラムマスター』というタイトルでアーケード版を海外に持っていったことがあるんですが、あまりうまくいかなかったんですよ。そのトラウマがあるのかもしれないなぁ。
宮下 ドン! とカッ! しかないのがいいんですよ。
山田 スワイプしたり、ピンチインしたり……。
宮下 ダメです。ドン! カッ! なら、文字もそのままいけます。
山田 もし海外で出すとしたら、クラシックと、アーティストのものがいくつか……国内でもRIP SLYMEパックを出してますし……スキヤキソングとか、そういうところですかね?
宮下 スキヤキはたぶんダメですね。
山田 さっきから、僕の言うこと、全部否定してません?
宮下 惜しいですね。
山田 iPhoneは、音楽とも親和性が高いですからね。おかげさまで『太鼓の達人』も国内だけで100万ダウンロードを記録しています。これも、かなりな割合でインストールしていただいていることになります。最初からプリインストールされていてもいいくらいです。いいでしょ? プリインストール。AppBankが最初からiPhoneのSafariのブックマークに入ってたらいいじゃないですか?
宮下 標準アプリにしてもらうのがいいです。
山田 ぜいたくやわ。
宮下 でも、『太鼓の達人』は絶対海外がいいですよ。名前も『ドラムマスター』じゃなくて、せいぜい『タイコマスター』。太鼓くらいわかりますよ。何も変えずに音楽だけ変えればいいんです。全然通用しますよ。要らないんです、言葉なんか。
山田 TGSでは(太鼓の達人の)対戦型のモードを展示したんですが、言葉のわからないお子さんや海外の方もすぐわかるんですね。「Here, Push」くらいの説明で。iPhoneアプリって、説明書が入らないじゃないですか。それじゃいけないんじゃないかと思ってAppStoreの紹介文に(操作説明を)書いたりしたこともあるんですが、どこに入れても、結局は、まぁ、見ていただけないですね。
宮下 そうですね、『Angry Birds』も絵しかないですね。
●定番×定番。パックマン×なにかでよりおもしろく、新しくなる
山田 パックマンも説明なしで誰でもいけるぞ、と。ここからパックマンの話に入りましょうか。
宮下 パックマンと言えば、『パックマンピンボール』を以前、ものすごくプレイしていました。それで、iPhoneで『パックマン』が出て、ぽこぽこぽこってやってて、楽しいなぁと。
パックマンは、他のゲームのルールにも受け入れてもらえるキャラクターですよね。たとえば画面をものすごい勢いでシュシュシュッ! とやって腕が疲れるお城防衛ゲームというジャンルがあるのですが、そこに入っていてもいい。そして重要なのは、ただキャラクターとして入るだけでなく、たとえばフルーツを食べたら無敵になるとか、そういうパックマンの要素を入れていくことです。ちょっとしたパックマンらしさ、パックマンらしいおもしろさを、iPhoneにあっているゲームに足していけばいいんです。タワー・ディフェンスなんかいいんじゃないですか?
山田 パックマンのパズルはあるんですけど、タワー・ディフェンスね。確かに。誰か考えてもいいような気がする。先ほどビデオでお見せした『PAC-MAN REBORN』はどうですか?。
宮下 まだ、中身が見えないのでなんとも。でも、育成というテーマはおもしろいなぁ。Twitterを使っていくというのもいいです。パズルゲームもいいです。他にはパックマンの『Doodle Jump』なんてどうですか? 途中からパックマンステージになるんです。既存のゲームを、パックマンという視点、おもしろさで再解釈していく、パックマンの文脈でおもしろくするというのはいいかもしれません。
USのランキングって、全然、動かないじゃないですか。でも、パックマンという王道のコンテンツであれば、そうした定番の中に入り込めますね。
山田 今でも、オリジナルの『パックマン』を値下げするとランキングに入ってきたりするんですよ、アメリカで。普通、なかなかそうはいかないのですが。いっそ、うちのアプリは全部、アイコンをあれにしてやろうかと思うくらい。
宮下 バンダイナムコゲームスさんが抱えているキャラクターでパックマンをやるというのはどうですか?
山田 それは全然、おもしろくない。
宮下 じゃあ、ピザを焼くゲーム。
山田 パックマン自体、もともとピースが1つ欠けたピザだからね。
宮下 ゾンビ入れておきましょう。パックマンVSゾンビ。これでアメリカはうまくいきます。なんであんなにアメリカでゾンビがウケるかというと、理由は簡単で、三か月に一本、新しいゾンビ映画が公開されるからなんですよ。どれもこれも同じ話、同じような内容でも。
山田 じゃあ、そんな中のどれかとコラボすればいいんや。ドアがバーン! って開いたらパックマンが迫ってきて……こわないわ。
宮下 定番ものとパックマンという組みあわせに期待したいですね。定番と定番で、さらにおもしろくなるということです。
山田 定番と定番で新しくもできますね。
宮下 iPhoneアプリの市場はまだまだ飽和しませんから、いけると思います。
山田 Googleのロゴをやった時も、あらためて、その前後の何十倍もダウンロードされましたからね。パックマンは、すでにGameCenter対応をはじめていて、『REBORN』もあって、新しい見せ方が成立しつつあると考えています。次は他社とコラボするという方向性はありですね。
宮下 ゲーム同士のコラボがいいですね。『Angry Birds』に出てくる。そのままいけるじゃないですか。『リアルレーシング』にパックマンでもいいですよ。
※ここで唐突にアップルストア銀座のスタッフから終了のコール。
山田 三連休の真ん中の日曜の夕方に、こんなとりとめもなく、だらだらした話ですいませんでした。ありがとうございました。