ソーシャルゲーミングネットワークについて、2010年2月26日朝のメモ

どちらがいい悪いという話ではない。この記事は、あくまで現時点の僕のメモという域を出ないものだ。

昨日、非常に興味深い2本のiPhoneアプリがリリースされた。1本は、ハドソンの「ネット雀狂」、もう1本は、AppBankの「ポケットべガス」。仕組みとしては、一見、よく似ているようだが、この2本には大きな違いがある。

「ネット雀狂」は、その名の通り、麻雀のオンライン対戦を主としたアプリだ。アプリ自体は無料で提供され、ネットにつながずに一人で遊ぶのなら無料、オンライン対戦を楽しもうと思えば有料となる(3月末までは1日3回、オンライン対戦も無料)。1日4回以上のオンライン対戦にはポイントが必要で、ポイントはアプリ内課金で購入する。

一方の「ポケットべガス」は、第1弾リリースである今回は対戦型ソリティアクロンダイク)と、同じく対戦できるミニゲームを楽しむアプリだ。近い将来、オセロや大富豪といったゲームも追加され、iPhoneで楽しむカジノアプリとでもいうものをめざして進化していく予定だ。こちらもアプリ自体は無料、一人で遊ぶのは無料、オンライン対戦を楽しむためのコインは毎日少しずつ支給されるが、その範囲を超えてプレイしたければ、やはりアプリ内課金で購入することになる。

では、オンライン対戦を楽しむ上で、どちらがお得なのか? 安いのか高いのかという議論には意味がない。ソフトベンダー側から見ても、その設定には統一的な基準はありえないだろうし、ユーザー側からみても、より高額を賭けなければ楽しめないというユーザーもいれば、小額でなければ耐えられないユーザーもいるだろうからだ。

興味深いのは、この2本のユーザー登録という部分だ。

「ネット雀狂」は独自のユーザー登録を求める。そのこと自体には、あまり抵抗はない。カジュアルなオンラインゲームをプレイするユーザーは、たいていの場合、共通するニックネームを使っているだろう。あまり悩まずに登録することはできる。一方の「ポケットべガス」は、独自のユーザー登録は不要で、最初のプレイ時にツイッターのアカウントを登録することになる。この点が、似て非なる2本の「非」だ。コンシューマゲームに慣れた僕の目には、「ポケットべガス」の方法が非常に新鮮に見える。

と、ここまで書いておいて、実は本稿にはまだ結論がない。最初にお断りした通り、僕のメモだから。現時点の結論めいたものは僕の中にあるのだが、ここで披瀝するには、まだレベルが低い。ただ、ただ一点、僕には大きな危惧がある。莫大なコストの投資に慣れてしまったコンシューマゲーム業界は、ユーザーの囲い込みという点で、誤った道を選択してしまっているのではないだろうか? ということだ。市場は大きいけれどもプレイヤーの少ない競争環境に慣れ切ってしまって、戦い方を見誤っていないだろうか? もしそうだとしたら、コンシューマゲーム業界が20年という長い年月でつちかってきた優れたコンテンツも、簡単に失われてしまいかねない。

15万に達しようかというアプリがあり、ゲームだけでも4万タイトルと言われるiPhoneアプリの世界は巨大な実験場だ。コンシューマゲームメーカーにとっては参入障壁が低すぎて(既得権益が守られない)ビジネスにしづらい市場だが、ここで戦う勇気とアイディアを持たなければ、もうすぐ目の前に迫った大きな変化に対応できない。iPhoneアプリの世界でこそ、ゲームの未来の、その素描を見ることができる。これだけは、まちがいのないことだから。


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